今回は抵抗分圧です。
まず、前回の回路図を開いてください。この回路図に抵抗を1本追加します。LTspice回路図ウインドウをアクティブにした状態で、Ctrl+Cを押します(F6キーでも可)。するとコピーモードになるので、抵抗R1をクリックします。
縦長の抵抗が出現するので、Ctrl+Rを押して、90度回転させます。その抵抗を下図のように、上側で横に走っている配線ラインに重ねて置きます。
抵抗を置いたあとはコピーモードを抜けるために、マウスの右ボタンをクリックします。この時、抵抗と重なっていた配線ラインは消えます。
他のCADソフトでは配線は消えずに抵抗が配線でショートした形になることが多いのですが、LTspiceではショート状態ではなくなります。意図的に抵抗をショートしたい場合は抵抗を避けて配線ラインを描く必要があります。
次に、わかりやすくするために、ノードに名前を付けることにします。Label Netのアイコンをクリックし、テキストボックスにOUTと入れ、OKボタンを押します。それを下図のように、抵抗と抵抗の間のラインに置きます。同様にINというラベルを電源の上にも置きます。
ここで、前回同様RUNアイコンを押して解析を実行します。
OUT端子の電圧は0.5V(500mV)となっているはずです。
2本の抵抗の中間地点の電圧は、次のように計算することができます。今回の場合は、
- V(OUT) =V(IN)*R1/(R1+R2)
となります。このように抵抗を使って任意の電圧を得ることを一般に抵抗分圧と呼びます。
V(OUT)の計算の方法としては、まずR1に流れる電流を求め、その電流とR1の抵抗値を掛け算して電圧を求めることもできます。
- I(R1)=V(IN)/(R1+R2)
- V(OUT)=I(R1)*R1=V(IN)*R1/(R1+R2)
となり、当然ながら先ほどの式と同じになります。
ここで5Vの電源から抵抗分圧で1Vを作りなさい、という課題が与えられたとします。
どのように抵抗値を決めればよいでしょう?
先ほどの式を変形すると、
- R2=R1*(V(IN)-V(OUT))/V(OUT)
となるので、仮にR1を先ほどと同様100Ωとすると、R2は400Ωと計算できます。
R1を10kΩとしてR2を40kΩとすることもできます。kは言うまでもありませんが、10^3という補助単位です。ちなみに、LTspiceで使用できる主な補助単位は下記のようになっています。
- T = 10^12
- G = 10^9
- Meg = 10^6
- k = 10^3
- m = 10^-3
- u = 10^-6
- n = 10^-9
- p = 10^-12
大文字、小文字の区別がなく、Megだけちょっと変わっているのが要注意です。
先ほどの抵抗の選び方に戻ると、今回のように単純に分圧比だけを課題(仕様)として与えられた場合は回答は無数にあることになります。
実際は消費電流や、後段でどのように電圧を使用するか、という制約条件を加えて、数値を選定することになります。
ただし、今回R2の抵抗値を40KΩと決めたとしても、こんな抵抗値の抵抗は秋葉原に行っても売っていないという問題があります。
一般に市販されている抵抗はE系列という数列に従った値の抵抗値になっています。主に使われるのはE12かE24系列の抵抗です。
- E12系列 10,12,15,18,22,27,33,39,47,56,68,82
- E24系列 10,11,12,13,15,16,18,20,22,24,27,30,33,36,39,43,47,51,56,62,68,75,82,91
上記のような比率で用意されているため、E12系列では33kΩの次は39kΩといった感じになります。
このように決まった理由は、実際の回路設計をする場面では、何%増減したいということが多く、上のような数列は対数目盛に並べると等間隔になり、使いやすいから、ということのようです。
そこで最後に、R1は10k、R2は39kとしてシミュレーションをしてみましょう。
上の図をクリックして拡大するとわかりますが、V(OUT)=1.02Vとなっており、目標の電圧に対しての誤差は2%となっています。ただし、実際の設計では抵抗の精度を考慮する必要があります。許容誤差±5%や±1%のものなどがありますが、一般に精度が高いほど、価格も高くなります。
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