アナログ回路になじみの無い、デジタル系の人たちも”パスコン”という言葉を聞いたことはあると思います。
今回は、そのパスコンの役割や動作を解説したいと思います。
電子回路の載ったプリント基板を見ると、大抵電源ラインとGNDの間にコンデンサがついています。
これは電源ラインの電圧変動を小さくして、誤動作や信号へのノイズ混入などを防ぐためです。
電源が理想電源であれば、どんなに負荷電流が流れても電源電圧は変動しませんが、実際の電源やプリント基板には抵抗や、インダクタ成分があるため、電圧変動が発生してしまいます。
今回もLTspiceでシミュレーションして確認してみます。
新しい回路図(schematic)を用意し、をクリックしてcurrentを選択し、下図のように配線します。
currentを配置したら右クリックしてAdvancedの中を次のように入力します。
左上のFunctionの中のPULSEを選択します。そして下のようにパラメータを入力してください。
I1:0
I2:1
Tdelay:0
Trise:0.1u
Tfall:0.1u
Ton:10u
Tpreriod:100u
これで、周波数10KHzで1Aのパルス電流源になります。
Trise,Tfallはパルスの立ち上がり、立下り時間です。
また、電源ラインには0.1Ωの抵抗とo.1uHのインダクタを挿入しています。
これはプリント基板等で配線した時に、どうしてもついてしまう発生してしまう要素で、「寄生素子」という言い方もします。
これまでLTspiceで使用できる単位について説明していませんでしたが、下記のような単位が使えます。
Suffix | 読み方 | Multiplier |
---|---|---|
T | テラ | 1e12 |
G | ギガ | 1e9 |
Meg | メガ | 1e6 |
K | キロ | 1e3 |
mil | ミル | 25.4e-6 |
m | ミリ | 1e-3 |
u | マイクロ | 1e-6 |
n | ナノ | 1e-9 |
p | ピコ | 1e-12 |
f | フェムト | 1e-15 |
上図をシミュレーションした結果が下図になります。
I1の上端の電圧(vcc)には0.1Vの小さなへこみと±1V程度のひげ状のノイズが発生しています。
この電圧ががもう少し大きくなると、ロジック回路でも誤動作してしまいます。
次に、パスコンとして10uFのコンデンサを入れたシミュレーションをしてみます。
さきほどと同じレンジで表示していますが、大きなひげはほとんどなくなっています。
小さなへこみまで無くすためには、さらに大きなコンデンサを接続する必要があります。
ちなみに、シミュレーション結果の縦軸の表示範囲を設定したい場合は、縦軸の数字の部分をクリックすることで設定できます。
次に、無料相談掲示板で質問のあった、自動車のセルモータ動作時の電圧ドロップによる誤動作問題についてシミュレーションしてみます。
セルモータを回した時に、シガーソケットから電源を取っているMP3プレーヤーが誤動作してしまうという問題です。
対策としてコンデンサを追加して電圧ドロップを抑えるためには、どのくらいの大きさのコンデンサが必要か、ということでした。
今回のシミュレーションにはダイオードを使用します。
ダイオードの動作に関しては、別のページで解説する予定ですが、とりあえずを押して、diodeを選択し、下図のように配置してください。
次にdiodeを右クリックし、[Pick New Diode]をクリックします。
1N5817を選択して、OKボタンを押します。
I1がセルモータの電流で、1秒後から0.5秒間、100Aの電流が流れるように設定しています。
I2がMP3プレーヤーの消費電流を表現しています。
この回路のシミュレーション結果が下図になります。
当然ですが、1秒後から0.5秒間はVccMP3の電圧も2Vまで低下しています。
この電圧降下を防ぐためにコンデンサを追加するのですが、必要な容量について次のように回答しています。
必要なコンデンサの大きさですが、ラフな計算としては、電圧保持時間を t 、その時の電圧低下量を v 、消費電流を iとすると次の式になります。
C = (i * t) / V
電圧保持時間tを0.5秒、電圧低下量を1V、消費電流を50mAとすると、
C = (0.05 * 0.5) / 1 = 0.025 = 25000uF
と、かなり大きなコンデンサが必要になります。
この計算が正しいかどうか、上の回路に25000uFのコンデンサを追加してシミュレーションしてみます。
上図のように、VccMP3の電圧ドロップは1V程度におさまっていることがわかります。
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