今回はインダクタ(コイル)について説明します。
抵抗やコンデンサにくらべ、素子としては使われる機会の少ない素子ですが、その性質を理解しておくのは非常に重要です。
(5) コンデンサと時定数 では 電圧、電流、抵抗、コンデンサについて次のように書きました。
- 電圧:電気の圧力、電流を流そうとする力で、よく水道の水圧にたとえられます。単位はV(ボルト)
- 電流:電気の流れる量、水の流れをイメージするとわかりやすいかもしれません。単位はA(アンペア)
- 抵抗:文字通り、電流の流れを妨げようと抵抗するものです。水道にたとえると、太いパイプは水が流れやすく細いパイプは水が流れにくい、ということです。単位はΩ(オーム)
- コンデンサ:電気(電荷)を蓄えることのできる素子です。直流電圧を加えても電流は流れませんが、交流電圧を加えた場合は、電流が流れます。この電気を蓄える能力の単位はF(ファラッド)です。
コンデンサに習ってインダクタ(コイル)を定義すると
- インダクタ:電流を蓄えることのできる素子です。直流電圧に対しては抵抗を持ちませんが、交流電圧に対しては抵抗を示し、周波数が高いほど電流が流れにくくなります。単位はH(ヘンリー)です。
(3) 抵抗と電流でも書いたように、上に書いた定義はかなりデフォルメしてあり、技術的に厳密な定義とは異なっています。
ある程度電子回路に慣れてきたら、ウィキペディア等で別の定義を確認してみてください。
インダクタは一度電流を流すと、その電流を流し続けようとする性質があります。この性質を利用して、入力電圧よりも大きな電圧を発生させる昇圧回路を構成することもできます。
まず最初にコンデンサの時と同様、抵抗とインダクタの直列回路にステップ電圧を加えた時の様子をシミュレーションしてみます。
インダクタはキーボードでLとたたくと現れます。コンデンサの時と同様に回路図を作成してシミュレーションしてみてください。
下図のような結果になったと思います。
インダクタの電圧は最初に電源電圧と同じ電圧になり、徐々に小さくなっていっていることがわかります。
LTspiceは素子に流れる電流もプロットすることができます。
インダクタの上にマウスカーソルを重ねると、電流プローブの形に変わるので、そこで左クリックしてください。
回路図上、インダクタの向きが逆になっていると、表示される電流も±が反転したものになります。
もし、上図と異なっていたら、素子を回転(を押してからctrl+R)してください。
インダクタの電流は最初は0で、1Aに向かって変化していきます。
次に、インダクタが電流を流しつづけようとする様子をシミュレーションしてみます。
LTspiceは外部電圧でON/OFFをコントロールできる、電圧制御スイッチを使用できるので、これを上図に追加してみます。
を押して、SWを選択し、回路図に置いて下図のように配線してください。
また、を押して、SWのモデルを定義します。.model sw sw(Ron=1m)と入力して配置してください。
これはオンしている時の抵抗を1mΩにする、という意味です。
他のパラメータはディフォルト値が使われ、コントロール電圧が0V以上でONするスイッチになります。
V2はスイッチコントロール用の電圧源で、3秒までは1Vで3.01秒に-1Vなるように設定しています。
つまり、スイッチは最初ONで3.01秒後にOFFになります。
R2はスイッチがOFFした直後の電圧を制限するための抵抗です。
ノード(素子と素子の接点)に名前を付けておくと、シミュレーション結果を見るときにわかりやすいので、今回はR2の上端にOutという名前を付けます。
を押してOutと入力し、R2の上端に配置してください。
この回路をシミュレーションしたものが、下図になります。
インダクタの電圧は先ほどのシミュレーションと同様、徐々に0Vに近づいていきますが、3秒後に-9Vまで一気に変化しています。
ここで注目しておきたいのが、インダクタの電流です。
3秒後にスイッチがOFFした後も電流が流れ続けていることがわかります。
この電流がR2に流れることから、Out端子の電圧が-9Vになる、ということです。
この回路ではOut端子は-9Vになりましたが、スイッチとインダクタの位置を入れ替えると、+側に昇圧することもできます。
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