アナログ回路設計コンサルタント 株式会社e-skett

アナログ電子回路設計に関する技術コンサルティングのご用命は株式会社e-skett

〒253-0012 茅ヶ崎市小和田三丁目8番-12-611号

LTspice24 Tips 6 周波数応答解析の進化

LTspice24 Tips 6 周波数応答解析の進化

LTspice24では、周波数応答解析が簡単にできるようになりました。解析設定画面に、SW電源等の周波数特性解析に使用する、“Transient Freaquency Response”タブが追加されています。
また、電流フィードバック回路等の解析に使用できる、「4端子プローブ」素子も追加されています。

スイッチング電源の周波数応答を確認する方法

負帰還を使用したシステムでは、システムの安定性を確認するために、位相余裕等を調べる必要があります。
オペアンプや、シリーズ・レギュレータの場合はAC解析を行うことで、比較的簡単に位相余裕を確認できます。
ただし、スイッチング電源の場合は、AC解析では位相余裕を確認することができません。
スイッチング電源の周波数応答を確認する場合、まず、微小信号を注入してトランジェント解析を実施し、その微小信号に対する応答を調べます。そして、その微小信号の周波数を変えてトランジェント解析を実施し、応答を調べる、ということ繰り返し行います。最後にそれぞれの周波数に対する応答をまとめて、ループ利得や位相特性をグラフ化します。
LTspice24“Transient Freaquency Response”を使用すると、これらの一連の作業を自動的に実施することができます。

▼昇降圧DC/DCコンバータの周波数応答解析を実行する回路

下図は、図1昇降圧DC/DCコンバーの周波数応答を解析するための回路図です。出力(OUT端子)と帰還抵抗(R2)の間に「FRA素子」を挿入しています。「FRA素子」は、コンポーネント選択画面で、“FRA”を検索することで選択することができます。

昇降圧DC/DCコンバーの周波数応答を解析するための回路図
出力と帰還抵抗の間に「FRA素子」を追加する

FRA素子」のパラメータを設定する

次に、「FRA素子」を右クリックし、下図のようなパラメータの設定画面を開きます。
まず、“Start at Frequency”“End at Frequency”で周波数応答を測定する帯域を設定します。スタート周波数を低く設定するほど、トランジェント解析時間が長くなります。
次の行でオクターブあたりの解析ポイント数を指定します。解析ポイント数が多いほどなめらかなグラフが得られますが、解析時間は長くなります。
“Max # of Simultaneous Harmonics”で同時に注入する微小信号周波数の数を指定します。複数の周波数の信号を同時に注入することで、解析時間を短縮することができます。
その下が測定用微小信号の振幅です。表示されている画像のように、周波数によって振幅を変えることもできます。
最後に“Start Analysis at Time”を指定します。これは微小信号を注入して周波数特性の解析を開始する時間です。DC/DCコンバータの出力電圧が十分に安定する時間に設定します。

FRA素子」の設定画面
周波数応答の解析周波数範囲や注入信号の振幅等を設定する

“Transient Freaquency Response”解析を指定する

次に、解析の種類として、“Transient Freaquency Response”を指定します。
Cの解析設定画面で、右端の“Transient Freaquency Response”タブを選択します。設定できる項目は通常のトランジェント解析とよく似ています。
今回は、“Start external DC suppiy voltage at 0V”のみチェックを入れます。

LTspice解析設定画面
右端の“Transient Freaquency Response”タブを選択する

“Transient Freaquency Response”解析のシミュレーション結果

下図が時間応答のシミュレーション結果です。上段がFRA素子の両端電圧で、周波数応答を解析するための微小信号です。複数の周波数の信号を、同時に注入していることがわかります。下段が出力端子電圧です。微小信号の注入を開始する1ms時点では、安定した電圧になっています。

“Transient Freaquency Response”解析の時間応答のシミュレーション結果
FRA素子は、複数の周波数の信号を同時に注入している

下図は周波数応答のシミュレーション結果です。このグラフは、“Transient Freaquency Response”解析が終了すると、自動的に表示されます。
左側の縦軸がループ利得で、右側の縦軸が位相です。ループ利得が0dBになる周波数と、位相余裕も自動的に表示されます。

周波数応答のシミュレーション結果
ループ利得が0dBになる周波数と、位相余裕も自動的に表示される

なお、「4端子プローブ」素子の使用例を含んだ、様々な“Transient Freaquency Response”解析のサンプル・ファイルが用意されています。ツールバー・メニューの[File][Open Exsamples]から、Educational\FRAフォルダの中のサンプル・ファイルを開いて確認してみてください。

*この記事は、CQ出版社のLTspiceメールマガジンの記事「昇降圧DC-DCコンバータの効率と入力電圧/電流の関係」からの抜粋です。

«

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

画像ファイル添付 (JPEG only)