現在App Storeで公開中のiPhone用電卓ソフト(e-calcPro Ver1.30)の使い方です。
目次
1.特徴
このアプリは通常の電卓としての使い勝手を生かしながら、数式電卓としての機能を持っています。また、電気系エンジニアがよく使用する、p,n,μ,kなどの単位(engineering multipliers)をキー入力することが可能で、表示もこれらの単位を使ったものとすることができます。
特徴をまとめると次のようになります。
- 計算履歴が残せ、再利用が可能
- engineering multipliersが使用可能で、専用ボタンを6個用意
- 4個のユーザ定義定数用ボタンを用意
- 4個の対話型入力変数が使用可能
- 数式をワンタッチで呼び出せる数式ボタンを3個用意
- 対話型入力変数は別名定義が可能で、日本語を使用した問合せ入力が可能
- 使用可能関数 √,log,ln,sin,cos,tan,sinh,cosh,tanh,asin,acos,atan,asinh,acosh,atanh,e^x
- 組み込み定数はπ,bk,q,e0で演算子としてべき乗^およびそれを使用したx^2ボタンも用意
- 不足括弧の自動補完機能
- キークリック音ON・OFF機能
- エンジニアリングモード時の少数点以下の表示桁数制限(3桁)のON・OFF機能
- 計算履歴メール送信機能
- オンラインヘルプビューア
2.概要
これがe-calcProのスクリーンショットです。
下側は一般的な関数電卓と同様なボタンが並んでいます。
表示部分は3つに分かれています。
一番下が、一般的な電卓の表示部分と同様な、入出力表示エリアです。
その上が、現在計算中の数式を表示する計算式エリアです。
さらに、その上が過去の計算式と計算結果を表示する履歴エリアとなっています。
計算式エリアの右下には下図のように現在の表示モードと三角関数の単位系が表示されています。
この文字が小さくて見にくい場合は、モード変更用ボタンに、現在のモードとは逆のモードの文字が 表示されるので、そちらを参照してください。
下半分にインプット用のボタンが並んでいますが、e-calcProでは電気系エンジニアがよく使用するエンジニアリング単位を使用することができます。
それぞれのボタンの意味は、
p=1E-12,n=1E-9,u=1E-6,m=1E-3,k=1E3,M=1E6 となっています。
ボタンから直接入力できるのはこの6種類ですが、表示にはf=1E-15,G=1E9も使用しています。
ENG(NML)ボタンを 押すことで、指数形式を使用した表示か、この補助単位を使用した表示にするかを選択することができます。
ただし、[ENG]モードでも1E15以上または1E-16よりも小さな計算結果の場合は指数表示となります。
入力に関しては表示モードに関係なく、どちらの方法も使うことができます。
ボタンはClearボタンです。入出力表示エリア(input & output area)を0にリセットします。
ボタンはALL Clearボタンです。入出力表示エリア(input & output area)だけでなく、 計算式エリア(Expression area)もクリアします。
イコールボタンを押した後は、特に[AC]ボタンを押さなくても続けて次の計算ができるようになっていますが、すっきりした状態で次の計算を行いたい場合に使用してください。
このボタンを1秒以上押し続けると、計算履歴領域をクリアするかを問い合わせるダイアログが表示されます。
ボタンの表示に括弧がついているものは関数になります。√も関数の扱いになりますので、最初に√ボタン、次に数値という順番に入力してください。例えば√3を計算する時は次のようにボタンを押すことになります。
右括弧を入力していませんが、これは自動補完されます。
括弧を使用した計算も可能です。左括弧の入力を忘れて、右括弧のみ入力した場合は、計算式の一番左端に左括弧を自動挿入します。
また、= ボタンを押した時に、右括弧の数が足りない場合は、式の右端に必要な数の右括弧を自動挿入するようになっています。
=ボタンを押した後、*,/,^,X^2を押して連続計算を行う場合、前回の計算式全体を自動的に括弧でくくります。
ボタンの動作も若干変わっています。1+2+3と入力した後にこのボタンを押すと、1/(1+2+3)というように、これまでに入力済み部分を括弧でくくり、1を割るという式に変換します(変換するだけで、実際の計算は行いません)。
1+2+1/3 としたい場合はこのボタンを使用せず、数式どうりに入力してください。
ボタンは式にpi_という文字を挿入します。実際の計算ではpi_=3.141593…として計算します。
ボタンは式に(2xpi_)という文字を挿入するだけですが、カットオフ周波数の計算等では便利に使用できると思います。
ボタンは式にbk_という文字を挿入します。これはBoltzmann’s constantで計算時はbk_=1.3807E-23 に変換されます。
3.関数について
関数ボタン部分を指で左にスワイプすると別の関数ボタンが現れます。
さらにボタンを押すと、また別の関数ボタンが現れます。
ボタンはべき乗演算子です。x^yを計算する時に使用します。^の後に関数や定数を直接入力することはできないようになっていますので、関数や定数を指数として使用する場合は(を先に入力してください。
また、
ボタンを押すと、入力エリアの数字の後ろに、^2という文字を追加します。実際の演算は、次の演算キーもしくは=ボタンが押された時に行われます。
は自然対数の底eのべき乗を示す関数です。e(3)はe^3を表します。
ボタンは式にq_という文字を挿入します。これはelementary chargeで計算時はq_=1.60218E-19に変換されます。
ボタンは式にe0_という文字を挿入します。これは真空の誘電率で計算時はeo_=8.854E-12に変換されます。
ecalcProで使用できる定数をまとめると次のようになります。
4.定数の使い方
さらに関数領域を左にスワイプすると下図のようになります。
C1〜C4はユーザ定義定数ボタンです。よく使用する定数を記憶させて使用することができます。
また、FM1〜FM3は数式ボタンで、よく使用する数式を記憶させ、必要な時にワンタッチで呼び出すことができます。後述するC5〜C8の対話型入力変数を数式の中に入れておくと、さらに便利に使えます。
ボタンを押すと、定数及び数式の登録用画面になります。
入出力エリアに数値を入力しておき、ボタンを押すと下図のようにC1_に定数が記憶されます。
この表示は1秒で消えます。
C1ボタンを押すことで記憶した定数を呼び出しますが、この時、数式にC1_という文字で追加するか、数字に変換して追加するかを、後述する設定画面で設定することができます。
5.数式と対話型変数
同様に、ボタンを押すことで、数式エリアの数式をFM1ボタンに記憶させることができます。
次に、対話型入力変数の使い方ですが、2ndボタンが押された状態で数式エリアをタップすると編集モードになり、下図のようにC5〜C8ボタンが現れます。
このC5〜C8ボタンを使って式を入力し終わったらもう一度数式エリアをタップして編集モードから抜けてください。
その後=ボタンを押すと、次のように変数の値を聞いてくるので、数値を入力後ボタン(=ボタンの表示が変わったもの)を押してください。
C5_〜C8_という変数には別名を定義することができます。
このボタンを押して設定画面を開いてください。
この設定画面のFM3の部分の設定例が次の画面になります。
2行目はボタンで保存した式が入っていますので、タイトルと変数の別名定義の部分に好きな文言を入力してください。
左上の青い文字が、電卓画面でボタンに表示される文字になります。半角4〜5文字程度までの長さの文字にしてください。
その後、ボタンを押して、電卓画面に戻ってください。
必要に応じてボタンを押し、ボタン(元の表示はFM3)を押すと、履歴エリアに式のタイトルが表示され、数式エリアに記録された数式が表示されます。
その状態で=ボタンを押すと、下図のように先ほど定義した別名を表示して数値の入力待ちになります。
e-calcProでは固定した変数名しか使用できませんが、このように分かりやす表現で対話型入力が可能です。
6.設定画面及びメールについて
設定画面では次のようなことが可能です。
- 履歴の編集
- C1〜C4 定数の確認及び編集
- FM1〜FM3の数式の編集及び、タイトルや変数の別名定義
- 履歴及び定数、変数別名定義等のメール送信
- メール送信して保存した定数、変数別名定義等をペーストボード経由で一括貼付け
- キークリック音のON/OFF切り替え
- エンジニアリングモードでの小数点以下の表示桁数制限設定
- 定数C1〜C4の挿入の仕方設定
計算履歴も含め、この設定画面に表示される内容はアプリ終了時に自動保存され、起動時に再度読み込まれます。
長く使用していると、計算履歴の行数が多くなりますので、適宜消去してください。履歴エリアは通常のテキストエディタのように一部分を選択して消去することや、メモを追記することも可能です。また、ボタンを使用して一括消去することも可能です。
ボタンを押すと、次のようなメール送信画面が開きます。
この例では宛先が空欄になっていますが、先ほどの設定画面のメールアドレス欄によく使う送信先アドレスを登録しておくと、この画面の宛先欄に自動的に表示されます。
メールで保存した定数や数式はペーストボード経由で再度貼付けることができます。
数式をメモ帳等で編集してから貼付ける、といった用途にも使えると思います。
現在の状態をメール送信して保存した後、下の設定例を貼付けて、動作を確認してみてください。
「この行から」と「この行まで」で挟まれた部分を画面長押しし、選択後、コピーしてください(前後に余分な行が入っても大丈夫です)。
その後、設定画面に戻り、ボタンを押すと、その内容が張り付けられるので、保存ボタンを押して、電卓画面に戻って数式機能を使用してみてください。
この行から
[Setting]
C1_=0.534483,C2_=0,C3_=0,C4_=0
FM1:dB>G
10^(C5_/20)
title=dBから倍率へ
C5_=dB値は,C6_=,C7_=,C8_=
FM2:G>dB
20xlog(C5_)
title=倍率からdB値へ
C5_=倍率は,C6_=,C7_=,C8_=
FM3:LCfil
1/(2xpi_xsqrt(C5_xC6_))
title=LCフィルターのカットオフ周波数
C5_=Lの値は,C6_=Cの値は,C7_=,C8_=
この行まで
7.その他のボタンの使い方
ボタンは直前の計算結果を入出力表示エリアにコピーします。
e-calcProでは=ボタンを押したあとでも、式を追加して計算が続けられますが、前回の計算結果に対して、演算したい場合には、=ボタンの後に、ボタンを押してください。
ボタンは 入出力表示エリアを1文字づつ消去します。関数や、定数の場合はそれ全体を消去します。入出力表示エリアの文字が無くなると、計算式エリアの文字も一文字づつ消去します。消去した後に正しい値や演算ボタンを押して計算を継続することができます。
先ほど説明したように計算式エリアをtapすると計算式エリアが黄色く変わり、編集モードに移行します。
このモードではカーソルボタンが使えるようになり、 このカーソルボタンを使用して選択領域を移動させることができます。
ボタンを押すと選択領域が消去されます。数字ボタンや関数ボタン及び演算ボタン を押すと、カーソルの右側にその文字が挿入されます。
選択領域は関数や定数の部分ではその長さに広がります。選択領域が左端に到達した時にさらに左カーソルボタンを押すと、選択領域が消えますが、この時何か入力すると、左端に文字が挿入されます。
編集終了後はもう一度 計算式エリアをタップして通常モードに戻ると、計算を継続することができます。
なお、前回の計算結果に式を追加して計算したい場合は、編集モードに入らなくても、=ボタンを押した後に、演算ボタン を押すことで、前回の計算式に式を追加することもできます。
8.計算履歴の再利用
過去の計算式を再利用することができます。
履歴エリアの再利用したい式を長押しするか、ダブルタップしてください。式の一部が選択され、ポップアップメニューが表示されますので、その中の「行選択」ボタンを押すと、一行選択されます。
その後、「再利用」ボタンを押すと、計算式エリアに式の部分がコピーされ、編集モードになりますので、適当に編集した後、編集モードを抜けて、=ボタンを押せば、再計算されます。
iOS5の場合は下図のようにポップアップメニューが折り畳まれてしまいますが、ボタンを押すと、再利用ボタンが現れます。
技術屋さんのための電卓で、使いやすいですね。2πキーが使えるのは確かに便利です。
ところが…
カットオフ周波数求めるには、
2πで割り算するんですが、
/2π とするつもりが、
/2×π となります。
つまり、2で割ってから、πをかけ算するんですね。
()キーを打って、
/(2×π) にする必要があります。
これでは2πキーの便利さが損なわれます。。
2πキーを、6.28…と定数扱いにできると良いのですが。
何卒ご検討いただければ幸いです。